CLASKA 「Tatami」

「リアルな偽物の和室」

 

2008年。
気が付けば今から14年も前、という事実に少し驚きながら書いていますが、「Hotel CLASKA」のリニューアル時、「日本の今」というホテルのコンセプトに合わせた10坪に満たないコンパクトな客室を3室作ることになりました。

 

 

もともと外国人ゲストの比率が高かったことと上記のコンセプトもあり、会議では難なく「和室」というテーマが導き出され「あとはよろしく」という流れに。
さてどうしよう、と模索がはじまりました。

 

 

何十年も前にできたビルの躯体を目の前にして、「この立体にまともにぶつかっては敵わない」と開き直った時に浮かんできたのが、「漫画」というキーワードでした。

 

 

漫画。或いは「二次元」や「平面」とも置き換えられるのですが、要は絵に描いたような誂えにすることで、そこにゲストが入り込んだ時に客室空間が一枚の絵になり、動くことで漫画の1ページになる……というイメージです。
真っ白な空間に“日本のあれこれ”を配置することにしました。

 

 

具体的に言うと、山形産の将棋盤に静岡産のピアノ塗装を施したローテーブルや近江産の麻布を使った碁石型のクッションを作ったり、床柱に青森の樺桜の樹皮を巻き付けたり。
ドメスティックなものだけを用いつつも、「ホンモノ」「日本の匠」といったニュアンスに寄りすぎないように注意を払いながら、あくまで漫画のような「リアルな偽物の和室」を真剣に作りました。

 

 

浅草観光をしている彫りの深い顔立ちの外国人がちょんまげのカツラを被っている様子に親近感を感じて、心の距離がぐっと縮まる感じ。なんとなくイメージできるでしょうか?
そういうユーモアというか、少し“クスッ”としてしまうような感覚が発想の元になってできた和室でした。

 

 

そんな「リアルな偽物の和室」を象徴するものとして作った、朱色に彩色した“キノコ型テーブル”については「OIL MAGAZINE」の連載「21のバガデルⅡ」をぜひお読みください。

 

ブログに戻る